Corypha umbraculifera / タリポットヤシ
 科名属名学名 ヤシ科Corypha umbraculifera
 タイ名 ลานวัด(ラーン・ワット),ワットはお寺の意 ลานเมืองเหนือ  
 その他名称 英名Talipot palm   インド・ベンガル語Tali,インド・マラティ語Talipot
 原産地  南インド・スリランカ・ アンダマン諸島に分布,ビルマ栽培。タイでは生育極少と思われる。
 用途など  葉は傘・敷物・日覆,古来写経。樹液から酒。硬質の種子はボタン・小彫刻品。
  
 葉の様子(葉先の形に特徴)
 
 チェンマイにて撮影  幹(茎)の様子

 コリファ属のヤシの葉(バイラーン)から作られた経文の展示 ランプーン県ハリプンチャイ博物館にて
     
 ハリプンチャイ博物館の展示  バイラーンの経典(箱入り)  バイラーンの経典
     
 経典に書かれた文字  バイラーンに文字を書く筆と台 台には糸が張られていた 

 樹形・幹・葉 樹高30m常緑樹。,単幹直立で樹姿雄大。世界最大のヤシと言われてる。葉:羽状葉 
 花・果実 花:両性花。極冠に大きな円錐花序を形成。 果実:核果。径3~4cm球形。種子1個。
        (*種子の保存の可否は未確認)
 花期 不明(出芽後40年~60年を経て一度だけ開花。開花結実は枯れ死する。)
 
名称  タイのタリポットヤシは,葉を写経に用いるためにスリランカより持ちこまれたものである。ラーン・ワットと称されるのは殆どが寺院(ワット)に植栽されたからである。タイにはコリファ属のヤシは他に2種(Corypha lecomtei ,Corypha utan)が生育し,タイ名は3種ともにラーン~と称され,その葉はすべてバイラーン(バイ=葉)である。
タリポットヤシの葉(バイ・ラーンの一種)に書かれた経典 チェンマイ国立博物館訪問
バイ・ラーンへの記載内容はさまざまであるが,経文คัมภีร(カンピー)が書かれた葉は,คัมภีร์ใบลาลカンピー・バイラーンという。三王広場のチェンマイ市立芸術文化センターで,チェンマイ国立博物館に展示ありと教えられ同博物館を訪ねた。入口で,カンピー・バイラーンはありますか訊ねたところ有りますとの返答。それもタリポットヤシの葉の経文であるとのこと。しかしその経典は展示している厨子の中に収納されていて外からは見られませんと言われた。なお,同博物館には他の2種(Corypha utanとCorypha lecomtei )のヤシの葉に書かれた経文は展示してないとのことだった。残念!
他に展示されているところを御存じありませんかと訊ねたところ,ランプーンのハリプンチャイ博物館に展示されているのではと教えていただいた。ランプーンのハリプンチャイ博物館へは翌日行くことにした。
タリポットヤシの葉(バイ・ラーンの一種)に書かれた経文 ハリプンチャイ博物館訪問 翌日ランプーン県のハリプンチャイ博物館を訪問した。入口でバイ・ラーンの経典の展示を訊くと中の係員が知っていると言われ入館した。係のかたに訊ねると,そこにありますよと手を差して教えてくれた。係の方の説明では,コリファ属の3種のバイラーンのどれかは不明,書かれた文字はランナー文字の1種とのことだった。許可を得て撮影したのが掲載の画像がカンピー・バイラーンである。
残念ながら,タリポットヤシ(Corypha utan)の葉と確定できた経本には出会えなかった。
参考 ランプーン県のハリプンチャイはかってはモ―ン人の王国として栄え,ランナー王国に仏教を伝えたのはスコータイやスリランカからの僧にやや先駆けてモーン人が伝えたのではと思われる。モーン人の残したモーン文字の経典はないか訊ねてみた。残念ながら確信できるものはないとのことだった。なお,同博物館はモーン文字で書かれた石碑や当時の仏像などモーン人の文化を伝える博物館としても知られている。
(*タイではモン・クメール族のモン族はモーン(มอญ),山岳民族のモン族はモン(ม้ง)と称するので,ここでは区別する意味でモーン人と記載した。)
 
雑感 タイのタリポットヤシ(ラーン・ワット)は現在では北タイにのみ生き残ってるとされている。北タイ・チェンマイで探し求めたが、私が出会えたのは画像の幼木一本だけ,樹高30mには遠く及ばないがタリポットヤシである。何とか大樹に巡り合いたいものである。
定着困難の推定 タリポットヤシが北タイで定着しなかった理由は,このヤシは40~60年を経ないと種子が採れないこと,株分けや挿し木で増殖できないからと思われる。スリランカの僧がタイへ渡る時期が開花結実のタイミングが合うことの困難さ、またタイ側では播種し成長してもヤシは株分け挿し木では増殖できず開花結実を待つにも40~60年となれば,,,定着は容易ではなかったと思われる。*種子は即発芽して長持ちしないようだ。

<追加画像>
シリキット公園に植栽のタリポットヤシ  *最近名表板が付された。
 
最近多少はヤシの特徴が判るようになって、これはCorypha属に違いないと思われるヤシの大木(幹に成長したもの)を見かけるが、種名特定の能がないので、掲載できずに残念無念である。何とかしたいものだが、、、。
Corypha属に違いないと思う理由の一つに、数年みているが開花の形跡が全く無いことにある。花・果実が見られたら判別はかなり可能と思うのだが、、、どうしようもないですね。


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