Borassus flabelliformis / オウギヤシ
 科名属名学名 ヤシ 科 Borassus flabellifer
 タイ名 ต้นตาล(トン・ターン)   ตาลโตนด(ターン・タノート)
 その他名称 英名Palmyra palm  インド名Tal,Tala(タラ), インドネシア名Lontar(ロンタル) 
カンボジア名Thnaot(タノート) 中国名ー扇叶糖棕、糖棕
 原産地 熱帯アフリカ原産。 アジア・アフリカに分布栽培。
 用途など 幹は木材,葉は屋根葺、樹液は砂糖原料、果実は生食等,,,、用途は幅広い。 
     
 雄株の若花序(白い雄花着花)    雄株の老花序(雄花散花後)
   
 チェンマイ堀周囲 雄株(左)と雌株(右)   雌株の幼果実   雌株の熟果実

 樹形・幹・葉 樹高30m常緑樹。単幹直立。葉:長さ5m羽状複葉(掌状葉?)。小葉は扇状に射出。
 花・果実 花:雌雄花異株。雄花白色,花弁3.  
       果実:液果(核果かも?)径15cmの黒褐色球形、3区画。果肉は可食。 種子:通常3個。胚乳可食。
 花期 通年開花(雨季に多い)
 
 野菜 新芽(ปีตาล / ปลีตาล ピー・ターン/プリ・ターン)を野菜として食用にする。
 
 オウギヤシの成長過程 上段の樹形画像のオウギヤシは幹の真ん中あたりに枯れた葉柄が落ちかかって付いていたので,漸くにしてオオギヤシの幹の成長過程での変化を知った。2段目のバンコクで撮影したオウギヤシはまだ葉柄が幹を覆っているので青年期だろう。
 
 タイ名 タイ名 ต้นตาล(トン・ターン)は,トン=木,ターンは梵語名(Tal,Tala)の音訳である。
 仏典の植物 南伝仏典では「ブッダはラジャグリハの多羅樹林の下で成道後2回目の雨安吾をされていたが,やがてピンピサーラ王から寄進された竹林精舎に移られた。」との伝えがある。
北伝仏典では,シッタルタが1本の矢で7本の多羅樹を射抜いた伝え,あるいは極楽世界を飾る宝多羅樹の伝えがある。その他にも仏典には頻繁に登場する。
漢訳仏典名ー多羅樹は梵語(Tal,Tala)の音訳名でタイ名 ต้นตาล(トン・ターン)同一由来である。
 
 雑感 チェンマイでは,寺院,街路,空き地などにかなり見られる。雄株雌株を1対1(1対)で植樹されていることが多い。当初はヤシの木などとても判別できなかったが,雨季に雄花と果実を見てこの木がそうだったのかと分かった。分かれば、、、何とたくさん植えてあるではないか!
*和名はオウギヤシよりタラヤシとしたほうが、各国共通性があり、歴史的文化的にも分かり易く正当と思われるが、名称由来の不明な和名タラバヤシという別種のヤシがあるので不都合なことである。
 
 *本種の食用利用(ヤシ砂糖、果実生食、新芽=野菜)と、経文材料利用は、下記に分割して掲載しました。


オウギヤシの食用利用ーヤシ砂糖、胚乳新芽(野菜)
      
 花序(花序の根元から採液) ヤシ砂糖(液)
   
バンコク・シリキット公園で撮影(青年期)  ヤシ砂糖(固形)  オオギヤシの胚乳(生食用)
     
野菜市場  新芽 野菜市場 新芽(雌雄花序が見える)  野菜市場  調理済 
オウギヤシのヤシ砂糖 ヤシ砂糖(Palm sugar)の採取に主として利用されるヤシ(Sugar palm)は,(和名)サトウヤシ(Arenga pinnata),サトウナツメヤシ(Phoenix sylvestris),ココナツヤシ(cocos nucifera),オウギヤシ(Borassus flabellifer)等である。
タイでヤシ砂糖として市販されているのはココナツヤシとオウギヤシのヤシ砂糖である。オオギヤシのヤシ砂糖はタイ語でน้ำตาลโตนด(ナム・ターン・タノート)と称されている。なお、ココナツヤシのヤシ砂糖はน้ำตาลมะพร้าว(ナムターン・マプラーオ)と称している。
試食
オウギヤシの固形ヤシ砂糖を市場で見つけられなかったので常宿の奥さんに頼んた。翌日純度100%のオウギヤシのヤシ砂糖(液)を買ってきて、フライパンで固めて形を整えてくれたのが画像のヤシ砂糖(固形)である。形が同一でないのは手作りのためである。試食に齧ってみた。味わいがあり風味が好い砂糖である。
果実(胚乳) 青空市場で販売されていたので購入し持ち帰った。果実1個内に3区画で3個採れる。冷やして食べたが、ヌルヌル感が何とも言えない。サトウヤシの胚乳のモチモチ感、ココナツヤシの胚乳は液体で、その真ん中くらいか?口に合うかな?
野菜 新芽(ปีตาล / ปลีตาล ピー・ターン/プリ・ターン)を野菜として食用にする。プリ=ピー=出芽。
野菜市場で初めて見たときは正体不明だったが雌雄花序の出芽時の新芽であることが判明し、漸く掲載した。
料理法や、味等はココナツヤシの幼木(野菜)に類似しているとのこと。
最上掲の雌雄花序が出現する直前に出芽するようであるが、未撮影である。


オウギヤシの葉の経文利用
     
 幼年期のオウギヤシ  葉の様子  
     
 オウギヤシの葉で作られた経本 オウギヤシの葉に書かれた経文   文字の拡大
オウギヤシの葉に書かれた経文 (チェンマイ市立芸術文化センター訪問)
オウギヤシの葉้ใบตาล(バイ・ターン)は,古くは被書体として用いられている。記載内容は様々だが写経にも用いらている。画像は三王像広場にあるチェンマイ市立芸術文化センター展示してあったオウギヤシの葉・バイ・ターンに書かれた経典である。立てかけて展示してあったが横画像にして掲載した。
写経にはCorypha属の3種のヤシの葉(バイ・ラーン)も用いられている。係の人からバイ・ラーンに書かれた経典は同センターにはないが,チェンマイ国立博物館にはあるのではと教えて頂いた。
*チェンマイ国立博物館訪問については,タリポットヤシのページに記載しています。
* オウギヤシの葉้ใบตาล(バイ・ターン)を多羅葉(タラバ)と訳すると無益な混乱が生じるので要注意である。
 経文に記載の文字はランナー文字である。ランナー文字は,北タイがランナー王国として栄えた時代に創生された文字でビルマ系文字(モーン文字)の影響を強く受けている。書体はランナー王国の地域や時代で幾通りかあるようで,現在では読める人は少ないらしい。
*バーリ語経文の文字は子音文字と母音文字から成る音素文字で発音と正確に対応するように書かれている。本来が音声言語であり、書体(Font)そのものに拘りはない。
参考 オウギヤシのインドネシア名Lontarはジャワ語Ron tal (ron=葉,tal=オウギヤシ)に由来する。同国はかっては仏教国であり,ブラーフミー系の文字が使われていた。Lontarの葉(オウギヤシの葉)は写経に用いられており,ウィキペデアーインドネシア版にはオウギヤシに書かれた経文が画像つきで掲載されている。 


 TOPへ


inserted by FC2 system